TwitterのDMから始まった「旧久米邸」保存活動

私が2019年に渋谷区議会議員に初当選してからの4年間で、渋谷区の皆さんなどから相談を受けた件数は約400件にも上ります。時には、TwitterのDMで相談が寄せられることも。その一つが、渋谷区代々木上原にあった歴史的洋館「旧久米邸」(岩佐多聞邸)についてでした。

旧久米邸は、皇居二重橋の設計者として知られる久米民之助氏(土木技術者、政治家)が自邸に設計した鉄筋コンクリート造の平屋建て洋館です。後に分かったことですが、大正初期に建てられた鉄筋コンクリート造の建物は、非常にめずらしいのだそうです。内外装もヨーロッパで流行していたデザインが採用されており、地域のシンボル的な存在でした。

当時は広い敷地内に建てられていましたが、時代を経て周辺は住宅街に。そして、2020年、所有者の意向で洋館は解体されることになったのです。そのため、保存したいと活動する区民や専門家の皆さんから、なんとかできないだろうかとの相談が私に届きました。

この旧久米邸のように、地域に暮らす人なら誰でもその存在を知っているようなものが大切に守られていくことは、文化継承としてはもちろん、地域で暮らす皆さんの安心感にもつながります。時代とともに街の形が変わっていくことは仕方のないことですが、工夫を重ねて「変わらない」ことを大切にしていくことも、地域の発展には欠かせません。

この時、私は、保存プロジェクトの皆さんと一緒に現地を視察したり、保存に向けて相談できる方とプロジェクトをつなぐなど、さまざまな可能性を考え支援しました。

その後、洋館は久米氏が名誉市民となっている群馬県沼田市への移築が決定。解体前には、文化や技術的な価値の調査も行われました。2021年度からは、沼田市の中心市街地にある大正ロマンエリアでの移築作業がスタート。復元された後は、地域活性化のために生かされていくそうです。私たちがその姿を再び目にできる日も近いことでしょう。

渋谷区で大切にされてきた建物が、沼田市で街のシンボルになっていく。この大切なもののリレーで文化を守り、未来に引き継いでいくことができたとすれば、私にとっても議員冥利に尽きます。歴史を感じる建物で過ごす時間は、とても心が落ち着き癒されるひと時です。そのような存在を、渋谷区内でも大切に残していきたいと思います。

広報ぬまた 令和4年3月号(広報第931号)「特集 旧久米邸洋館中間報告 洋館移築で地域活性化大正ロマンエリアに復元」

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